正標数の可換環論とその周辺2024 in 淡路島


場所

慶野松原荘  会議室【瑞松】     (詳しくはこちらをご覧ください)

JR三ノ宮駅(or 新神戸駅)から高速バス→陸の港西淡バス停にて下車→無料送迎バスで約10分
(高速バスの時刻表は、こちらをご覧ください)

日時

2024年3月26日(火)~3月29日(金)

記念写真

旅館の前
松と海をバックに

プログラム

プログラム(PDF)

3 月 26 日(火)

各自ホテルに集合
15:00~18:00 自由討論 

3 月 27 日(水)

9:00~10:30 橋本 光靖(大阪公立大)    不変式環の標準加群とa不変量
11:00~12:30 呼子 笛太郎(名古屋大)    準F-分裂について
14:00~15:30 河上 龍郎(京都大)    Frobenius stable Grauert-Riemenschneider vanishingの反例
16:00~17:30 佐藤 謙太(九州大)    正標数3次元多様体におけるBertiniの定理

3 月 28 日(木)

9:00~10:30 安田 健彦(大阪大)    Noncommutative Frobenius maps
11:00~12:30 中嶋 祐介(京都産業大)    New examples of toric NCCRs arising from conic modules
14:00~15:30 東谷 章弘(大阪大)    トーリック環のGeneralized F-signaturesと格子多面体の体積
16:00~17:30 松下 光虹(大阪大)    Dual F-signatures of toric rings

3 月 29 日(金)

9:00~10:30 松井 紘樹(徳島大)    フロベニウス押し出し関手の圏論的エントロピー
11:00~12:30 高橋 亮(名古屋大)    正標数の環の加群圏の強生成性

アブストラクト

橋本 光靖(大阪公立大)
k が標数 p の体, V は n 次元のベクトル空間, GはGL(V)の有限部分群とする. S = k[V]=Sym V* は V の(n次元アフィン空間としての) 座標環, A=SG はそのGの作用による不変式環とする. G の位数 |G| が p で割れないとき (non-modular な場合), a(A)≤a(S) である. また, 等号が成立する条件は G が SL(V)の部分群となることである. これはMolienの公式から割と容易に出る. 昨年, Goel, Jeffries, Singh はnon-modular の条件を外し, 条件を GがSL(V)の部分群でpseudo-reflection を持たない, と改める形で一般化した (non-modular な場合, SL(V)の有限部分群はpseudo-reflectionを持たない). これをさらに G が被約とは限らないし有限とも限らない有限型のアフィン群スキームにどこまで一般化できるかを考える. 今回以下が得られた. G に G が随伴で作用したものを Gad で表す. Gad のG同変標準層を単位元でSpec k に引き戻すとGの1次元表現が得られる. これをλとおく.
定理. G の作用がsmall ( V → V //G が quasi-torsorあるいは almost principal bundle) で λが自明の時,
1. 一般に a(A)≦a(S)=-n である.
2. 次は同値である. (i) G⊂SL(V); (ii) ωS ≅ S(-n) (as graded (G,S)-modules); (iii) ωA ≅ A(-n) (as graded A-modules); (iv) A は quasi-Gorenstein; (v) a(A)=a(S). □
2)の(i)と(iv)の同値性は不変式環の (quasi-)Gorenstein 性に関する渡辺敬一, Braun, Fleischmann-Woodcock, Liedtke-Yasudaの結果を同時に一般化している. 講演では定理の仮定がみたされる条件, Gが有限でsmallでもλが自明でない例, 高次元の例にも触れたい. 以上の内容は arXiv:2309:10256 に基づく.

呼子 笛太郎(名古屋大)
F-分裂性は正標数の代数多様体や可換環に対して定義される,非常に重要な概念であり, 準F-分裂性はF-分裂性の拡張の一つである. 講演では,概念を拡張することで(1)(klt特異点やFano多様体に対して)何が新しくわかるか?,(2)新たに生まれる技術的課題とその解決策(の提案)について解説する. 内容は河上龍郎氏,田中公氏,高松哲平氏,吉川翔氏,Jakub Witaszek氏との共同研究である.

河上 龍郎(京都大)
標数0では,特異点解消によるdualizing sheafの高次順像が消える(Grauert-Riemenschneider (GR) vanishing).一方,正標数ではGR vanishingは成立しないことが知られている.
正標数におけるGR vanishingの類似として,dualizing sheafの高次順像がFrobeniusのtraceによる作用で消滅するかという問い(Frobenius stable GR vanishing)が考えられるが, 本講演では,この問いにも反例があることを明らかにする. 証明のため,新しくFp-rationalという概念を導入し,3次元klt特異点は標数に関わらず,Fp-rationalであることを示す.

佐藤 謙太(九州大)
与えられた射影多様体Xについて, Xの諸性質が, Xのgeneralな超平面切断に遺伝するかどうか, という問題を考える. 標数0においては, 多くの特異点のクラスはgeneralな超平面切断に遺伝することが知られている(Bertiniの定理)が, 正標数においては多くのクラスで未解決である. 本講演では, Xが正標数の3次元の場合において, kltやlcといった特異点のクラスが切断で保たれることを示す.

安田 健彦(大阪大)
非可換フロベニウス写像を用いて商特異点の性質を調べた講演者による少し古い研究を紹介し、非可換フロベニウス写像の今後の可能性などを議論したい。

中嶋 祐介(京都産業大)
正標数の可換環のフロベニウス順像の自己準同型環は、非可換代数幾何学や表現論において重要な対象を与えることがある。 例えば、有限群の順な作用に関する不変式環や、トーリック環の場合、フロベニウス順像の自己準同型環は、非可換特異点解消(non-commutative resolution=NCR)と呼ばれる有限大域次元を持つ環となる。 上記の有限群の不変式環の場合は、さらに強く非可換クレパント特異点解消(non-commutative crepant resolution=NCCR)と呼ばれる対象になっている。 トーリック環の場合、フロベニウス順像の自己準同型環がNCCRになることはほとんどないが、 フロベニウス順像の直和因子として現れる加群(conic加群と呼ばれる)の一部を取り出すことによりNCCRを構成できることがある。 本講演では、conic加群から構成されるトーリック環のNCCRの新たな例を紹介する。

東谷 章弘(大阪大)
正標数の可換環の不変量としてgeneralized F-signatureと呼ばれるものが知られており、 トーリック環の場合はある多面体の体積を計算することで求めることが出来る。 本講演では、トーリック環のgeneralized F-signatureの組合せ論的な計算方法について紹介する。 Generalized F-signatureの中でも最も重要と思われる(通常の)F-signatureが、他のすべてのgeneralized F-signatureを求めることで計算できる場合もある。 これについても紹介したい。

松下 光虹(大阪大)
正標数の可換環に付随する不変量である(dual) F-signatureはその環の正則性を測る重要な量であり、 トーリック環においては、ある多面体の体積を計算することで、これらの不変量を得られることが知られている。 本講演ではトーリック環の(dual) F-signatureを組合せ論的に求める方法について知られている事実を紹介し、 いくつかのクラスのトーリック環のdual F-signatureの値について議論する。具体的には、 多項式環のVeronese部分環のdual F-signatureを決定したことと、多項式環のSegre積のdual F-signatureの上界を与え、 特定の場合で、それが実際のdual F-signatureと一致していることが判明したので、それについて紹介する。

松井 紘樹(徳島大)
圏論的エントロピーは位相的エントロピーのアナロジーとして2014年にDimitrov-Haiden-Katzarkov-Kontsevichにより導入された概念であり,与えられた三角圏上の自己完全関手の複雑さを図る不変量である. 本講演では正標数の可換環の有界導来圏上の自己完全関手であるフロベニウス押し出し関手についてその圏論的エントロピーを決定する.本講演は高橋亮氏との共同研究に基づく.

高橋 亮(名古屋大)
強生成性は、Bondal-Van den Bergh (2003)とRouquier (2008)によって三角圏に対して導入された概念である。 Iyengar-Takahashi (2016)は、十分多くの射影対象をもつアーベル圏に対して強生成性の概念を導入した。 講演者は最近Souvik Dey氏およびPat Lank氏との共同研究において、正標数のネーター環上の有限生成加群のなす圏の強生成性を調べた。 この講演では、この共同研究で得られた主な結果を報告し、今後の課題を述べる。

世話人

橋本 光靖(大阪公立大学)
東谷 章弘(大阪大学)

問い合わせなどは、東谷(higashitani あっとまーく ist.osaka-u.ac.jp)までご連絡ください。

本セミナーは、2023年度OCAMI共同利用・共同研究の支援を受けて開催されます。


最終更新日:2024年3月29日