これまでの講演一覧
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第75回
日時:2024年8月29日(木曜)13:30~17:00
講演者:筒井 勇樹(東京大学 大学院数理科学研究科)
題目:トロピカル多様体とEuler標数
要旨:トロピカル幾何とは代数多様体の組み合わせ的または凸多面体的類似であり, 標語的には「トロピカル半体上の代数幾何」といえる分野である.
トロピカル半体は加法の逆元の存在公理を除いて体の公理を満たす代数的構造の一つであり, これに付随して代数幾何における諸概念のトロピカル類似が定義できる.
本講演の前半では,トロピカル超曲面やトロピカル多様体 (tropical manifold)を中心に, トロピカル幾何学の基本的な話について紹介する.
後半では, トロピカル多様体のEuler標数とトロピカル直線束の Riemann--Roch 数の関係について講演者の研究を交えつつ紹介する.
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第74回
日時:2024年6月14日(金曜)13:30~17:00(大セミナー室での開催)
講演者:岩政 勇仁(京都大学 大学院情報科学研究科)
題目:離散凸解析の拡張に向けて
要旨:組合せ最適化において効率よく解ける(=多項式時間可解な)問題の背後に潜む数理構造の代表例として,「整数格子 Z^n 上の関数の凸性」である離散凸性が挙げられる.
離散凸性は,劣モジュラ性の拡張概念であるL凸性とマトロイドの拡張概念であるM凸性という2種類の凸性からなる.
L凸性とM凸性は互いに表裏一体の関係にあり(共役性),それらをつなぐ双対定理が確立されている(双対性).
共役性や双対性を含む離散凸性の様々な性質は離散凸解析として理論体系化され,離散最適化や計算量理論に限らず,
機械学習,ゲーム理論,経済学,オペレーションズリサーチなど,多様な分野で活用されている.
本講演では,離散凸解析に出てくる諸概念(L凸性,M凸性,共役性,双対性)やその実例などについて説明する.
また,講演者が近年考えている「Z^n ではない離散構造上での離散凸解析」についても議論したい.
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第73回
日時:2024年4月26日(金曜)13:30~15:00
講演者:田中 優帆(早稲田大学 大学院基幹理工学研究科)
題目:符号から得られる多項式とデザイン理論の関係
要旨:与えられた符号からどのような t-値を持つ t-デザインが得られるか,これを解決するためにJacobi多項式や調和重さ分布多項式が有用である.
本講演の前半では,符号理論とデザイン理論の関係について紹介する.特に,符号の Jacobi 多項式や調和重さ分布多項式を用いて,t-値を判定できることを紹介する.
後半では,多重 Jacobi 多項式を導入し,それに対する MacWilliams 型双対性を与える.さらに,多重 Jacobi 多項式を用いた,
符号の(一般)組合せデザインの存在性判定についても併せて報告する.
本講演の内容は Himadri Chakraborty 氏(SUST),大浦 学氏(金沢大学),三枝崎 剛氏(早稲田大学)との共同研究に基づく.
(講演の資料です。)[PDF]
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第72回
日時:2024年1月26日(金曜)13:30~17:00
講演者:松下 尚弘(信州大学 理学部)
題目:位相的 Radon の定理と van Kampen-Flores の定理
要旨:Radon の定理とは、 d 次元ユークリッド空間内の (d+2) 個の点が与えられたとき、交わりを持たない部分集合 s と t で、それらの凸包が交わりをもつようなものが存在するという1921年の定理である。
1979年 Bajmóczy と Bárány によって、 Radon の定理は次のように一般化された:(d+1)-単体 K から d 次元ユークリッド空間への任意の連続写像 f に対し、
K の面 s と t で、 s と t は交わらないが f(s) と f(t) は交わりを持つようなものが存在する。すなわち、 f がアフィン写像の場合が元々の Radon の定理である。
この Bajmóczy と Bárány による結果を位相的 Radon の定理という。
位相的 Radon の定理から古典的な単体複体の埋め込みに関する van Kampen-Flores の定理(1933)が直ちに導かれることが、 2010 年になって Gromov により指摘された。
本講演では、位相的 Radon の定理とその一般化である位相的 Tverberg の定理と van Kampen-Flores の様々な一般化との関連について述べる。
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第71回
日時:2023年10月13日(金曜)13:30~17:00
講演者:鈴木 有祐(新潟大学 自然科学研究科)
題目:オイラーの公式における多重グラフの扱いと三角形及び四角形埋め込みについて
概要:本講演の前半では,基礎的な用語などを確認しつつ講演者の専門分野である“位相幾何学的グラフ理論”の紹介を行う.
特に,良く知られているオイラーの(多面体)公式を用いる際の多重グラフの扱いに関する説明等を行う.
後半では,当該分野において頻繁に登場する“三角形分割”,“四角形分割”の定義や,それらのグラフに関する結果をいくらか紹介する.
また,近年,閉曲面上に多少の辺の交差を許して描画されたグラフに関する研究も盛んにおこなわれている.
“最適1-交差埋め込み”と呼ばれるグラフは上述の三角形分割や四角形分割と強い関係があるが,その事実と,これらのグラフに関するいくらかの結果を紹介する.
(講演の資料です。)[PowerPoint]
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第70回
日時:2023年7月21日(金曜)14:30~17:30
講演者:渡邉 扇之介(福知山公立大学 情報学部)
題目:(前半)Max-plus代数上の量子ウォークモデル(後半)多値多近傍セルオートマトンのファジー化手法とその応用
概要:(前半)Maxとplusを和積の演算とするmax-plus代数上で量子ウォークモデルの類似物を構築する.
何をもって類似なのか,モデルを決める発展方程式,保存量,極限分布の観点から議論を行う.
Max-plus代数における行列の固有値はその行列から表現される有向グラフ上の閉路と密接に関係する.
本講演はmax-plus代数を通して固有値・グラフ・量子ウォークの繋がりを楽しんでいただけるよう努める.
(後半)よく知られるセルオートマトン(CA)は,1次元整数格子上に与えられた0または1の値が3つの近傍の値によって時間発展する離散モデルで,これを2値3近傍CAまたはエレメンタリーCA (ECA)と呼ぶ.
256種類あるECAの時間発展はそれぞれ多項式で表現することができ,変数に[0,1]の連続値を代入することで得られるCAをファジーCAという.
この多項式で表現して連続値を代入するという手続きを3値3近傍CAに対してそのまま適用すると,値域が[0,2]で閉じないことがある.
本講演では任意のCAに適用可能なファジー化手法を紹介し,その応用について議論を行う.
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第69回
日時:2023年4月14日(金曜)13:30~17:00
講演者:辻栄 周平(北海道教育大学 旭川校)
題目:代数体の整数環上定義された超平面配置の特性準多項式
要旨:原点を通り,整数係数で定義されたいくつかの超平面からなる超平面配置を考える.qを正整数とし,超平面たちのqを法とした補空間の元の個数を数える関数はqに関する準多項式となり,特性準多項式と呼ばれる.特性準多項式は超平面配置の特性多項式を構成素として含むなどの良い性質をもつ.とりわけ結晶的ルート系から定まる超平面配置の特性準多項式はコクセター数に関する双対性をもつなどの興味深い性質をもつ.特性準多項式は整数環上の超平面配置について定義されているが,定義環を一般化して良い理論を構築することはできるであろうか.本講演では,代数体の整数環などの「剰余環が有限であるようなデデキント整域」に関しては,特性準多項式の理論を一般化できるということを紹介する.本講演の内容は日本文理大学の黒田匡迪氏との共同研究に基づく.
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第68回
日時:2023年1月14日(土曜)13:30~17:00
講演者:山口 勇太郎(大阪大学 大学院情報科学研究科)
題目: 組合せ最適化とマトロイド
要旨: 組合せ最適化の文脈では,マトロイドは扱いやすい離散構造の代表として語られることが多い.
実際,実行可能領域が部分集合に関して閉じた集合族であるとき,「任意の線形目的関数に対して貪欲法が最適解を出力する」ことと,
「実行可能領域がマトロイドの独立集合族である」ことは同値であり,この性質をもってマトロイドを定義することも可能である.
さらに,目的関数が線形であり,実行可能領域が 2 つのマトロイドの共通独立集合族として表せるような(重み付き)マトロイド交叉問題に対しても,
完全双対整数性に代表される良い多面体的性質や,様々なアイデアに基づく効率的なアルゴリズムが知られている.
本講演では,マトロイドと貪欲法の関係から始め,組合せ最適化におけるマトロイド交叉の理論と応用例と,
その先にあるマトロイド・マッチングの理論と応用例を紹介する.
さらに,講演者ら (with Kristóf Bérczi, Tamás Király, Yu Yokoi) が最近取り組んでいる「マトロイド交叉は本当に扱いやすい離散構造なのか?」
という疑問に対する答えの一部を紹介する.
(講演の資料です。)[PDF]
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第67回
日時:2022年10月8日(土曜)13:30~17:00
講演者:Thomas HALL (University of Nottingham)
題目:On the uniqueness of Kähler-Einstein polygons in mutation-equivalence classes
要旨:A (combinatorial) mutation is a type of operation which transforms a polytope into another polytope.
Studying Fano polytopes "up to mutation" is an important part of the programme of Mirror Symmetry for classifying Fano varieties.
On the other hand, we have Kähler-Einstein polytopes, which are Fano polytopes whose corresponding toric variety admits a Kähler-Einstein metric.
It's not immediately obvious why these two different notions would interact.
In this talk, I will explain how mutations work and outline how they fit into Mirror Symmetry.
I will also describe what Kähler-Einstein polytopes tend to look like.
Then, I will sketch the main ideas necessary in order to prove this surprising statement:
(in dimension two) there is at most one Kähler-Einstein polygon in each mutation-equivalence class.
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第66回
日時:2022年7月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:Oliver CLARKE (University of Bristol)
題目:Toric Degenerations of Families of Varieties and Combinatorial Mutations of Matching Field Polytopes
要旨:In recent work joint with Fatemeh Mohammadi (Gent University) and Francesca Zaffalon (Gent University),
we compute a new family of toric degenerations of partial flag varieties embedded in a product of projective spaces
parameterized by so-called matching fields in the sense of Sturmfels and Zelevinsky.
In this talk, I will introduce toric degenerations along with the families of combinatorial objects that parametrize toric degenerations of Grassmannian,
flag varieties and some of their important subvarieties namely Richardson varieties.
In particular, we will see that combinatorial mutations play an important role in constructing such toric degenerations.
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第65回
対面形式+オンライン配信
日時:2022年4月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:矢口 義朗(前橋工科大学 工学部)
題目:ブレイド群による4次対称群の直積へのHurwitz作用について
要旨:Hurwitz 作用とは,群の直積への組みひも群による自然な作用であり,幾何的には例えば曲面を「ひねる」操作としても説明できる。
自然数 $n$ を固定するとき,群 $G$ の $n$ 個の直積の元のうち,第 $1$ 成分から第 $n$ 成分までの積が単位元になるものを,$G$ のシステムとよぶことにする。
組みひも群のシステム全体を Hurwitz 同値で分類する(Hurwitz 作用で軌道分解する)ことは,曲面組みひも(分岐被覆を用いて定義される 4 次元球体内の曲面)の完全不変量を与えることが S. Kamada によって示されている。
組みひも群のシステム全体を Hurwitz 同値で完全に分類することは現段階では難しい。19世紀末,Hurwitz は対称群の互換のみからなるシステム全体を Hurwitz 同値で完全に分類した。
これは(単純分岐被覆を用いて定義される)単純曲面組みひもの不変量を与える。
この先,非単純な曲面組みひもの不変量を得るためには,対称群の互換以外の置換も混合したシステム全体における Hurwitz 作用も扱う必要がある。
2010年頃,C. Sia と E. Beger は独立に,3 次の対称群(もっと広く二面体群)のシステム全体を Hurwitz 同値で完全に分類した。
本講演では,組みひも群・Hurwitz 作用の定義,および基本的性質を紹介し,
4 次の対称群の純粋システム(同じ長さの置換を並べたシステム)全体における Hurwitz 同値類の完全代表系を求めた結果を報告する。
(講演の資料です。)[PDF]
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第64回
対面形式+オンライン配信
日時:2022年2月5日(土曜)13:30~17:00
講演者:藤田 直樹(熊本大学大学院先端科学研究部)
題目:クラスター代数とトーリック退化
要旨:クラスター代数は簡約代数群の全正値性の理論や量子包絡環の標準基底の組合せ論的性質などを調べるために Fomin-Zelevinsky によって導入された概念であり,
表現論のみならず, 双曲幾何やミラー対称性, Donaldson-Thomas 理論, 完全 WKB 解析などの多種多様な分野と密接に関係している.
その幾何学的対応物をクラスター多様体といい, seed と呼ばれるデータ毎に与えられる代数的トーラスをmutation という双有理変換で貼り合わせることにより構成される.
クラスター代数の良い基底は (拡大) g-ベクトルと呼ばれるデータによりパラメトライズされ,
その理論はクラスター多様体 (の部分コンパクト化) のトーリック退化 (トーリック多様体への退化) を構成する一般的な枠組みを与えている.
本講演ではクラスター代数の基礎から話を始め, 具体例や関連する組合せ論的対象を通して, 付随するトーリック退化について理解することを目指す.
本講演は部分的に大矢浩徳氏との共同研究に基づく.
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第63回
Zoomによるオンライン配信と通常の対面形式
日時:2021年11月26日(金曜)13:30~17:00
講演者:Christopher de Vries(北海道大学大学院理学研究院・University of Bremen)
題目:Ehrhart quasi-polynomials of almost integral polytopes
要旨:There exists a famous result by Ehrhart (1962) that states that
the number of lattice points in the $t$-th dilate of a rational polytope behave as a quasi-polynomial in $t$.
A lattice polytope translated by a rational vector is called an almost integral polytope.
The Ehrhart quasi-polynomial of every almost integral polytope derived from a centrally symmetric polytope satisfies the algebraic property of symmetry.
On the contrary, if the Ehrhart quasi-polynomials of every almost integral polytope derived from the same integral polytope is symmetric,
that integral polytope is centrally symmetric. A similar characterization exists for zonotopes and an algebraic property of quasi-polynomials called GCD-property.
The proofs use a function that describes the constituents of Ehrhart quasi-polynomials of almost integral polytopes.
This function turns out to be a polynomial. This is a joint work with Masahiko Yoshinaga.
(講演のスライドです。) [PDF]
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第62回
Zoomによるオンライン配信と通常の対面形式
日時:2021年10月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:梶浦 大起(広島大学大学院理学研究科数学専攻)
題目:位数120の可解群の difference set について
要旨:有限群Gとその部分集合Dについて,Gの元をDの二元の差を用いて表す方法が何通りあるかを考える。
そのとき,表し方の数がどの非単位元でも同じときにDを「difference set」と呼ぶ。
具体的に群をひとつ固定したときに,そのdifference setを決定するのは(計算機を用いても)非常に難しい。
例えば,5次対称群などは現在でも未解決である。
本講演では,difference setの基本的な定義や具体例の基本的事項から初めて,講演者らが開発したdifference setの新たな探索法を紹介する。
特に,この分野の未解決問題として「位数120の有限群にはdifference setが存在しない」という予想があるが,
位数120の可解群のうち特定の2種類について,我々の探索法を用いてdifference setの非存在が証明できたことも主結果として紹介する。
また,この探索法を用いて,未解決であった位数120のある可解群ふたつが計算できたことも主結果として紹介する。
この内容は,広島大学の松本眞氏と奥田隆幸氏との共同研究に基づいている。
講義ノート
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第61回
Zoomによるオンライン配信と通常の対面形式
日時:2021年7月3日(土曜)13:30~17:00
講演者:吉野 聖人(東北大学大学院情報科学研究科)
題目:Saturated equiangular lines について
要旨:講演はMeng-Yue Cao氏, Jack H. Koolen教授, 宗政昭弘教授との共同研究に基づく.
原点を通る直線たちが互いに一定の角度を成すときequiangular liensと呼ばれ,
特に直線たちが張る空間内においてそれ以上直線を (角度が一定になるように) 追加できないときsaturatedであるという.
我々は角度arccos(1/3)のsaturated equiangular linesの決定や,absolute boundを満たすならばsaturatedであることの証明を与えた.
証明においてスイッチングルートという特別なベクトルを考えることで,隣接行列に関する結果が適用できるようになる点が鍵となる.
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第60回
Zoomによるオンライン配信と通常の対面形式
日時:2021年4月17日(土曜)13:30~17:00
講演者:前澤 俊一(電気通信大学大学院情報理工学研究科)
題目:グラフのlinkage problemについて
要旨:ネットワーク上ではいくつもの頂点間(ノード間)で情報のやり取りが行われている.
そういったやり取りの中で,ある情報の伝達経路が他の伝達経路と交わらないことが望ましいことがありうる.
例えば,インターネット上で機密性が高い情報をやり取りする際などが考えられる.
こうした問題をグラフ理論のk-linked という概念の問題に翻訳し,解決しようという試みがなされている.
もう少し具体的に述べると,指定されたいくつかの頂点対を互いに頂点を共有しない道で結べるかという問題が考えられている.
本講演ではk-linkedに関するいくつかの既存の結果とk-linkedの拡張概念であるいくつかのlikage problemを紹介する.
(講演のスライドです。) [PowerPoint]
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第59回
Zoomでのオンライン開催
日時:2021年1月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:Tan Nhat Tran(北海道大学大学院理学研究院)
題目:Characteristic and Ehrhart quasi-polynomials for root systems
要旨:We are going to investigate a typical problem in enumerative combinatorics: counting the size of a set depending upon a positive integer q.
Often the result is a polynomial (e.g., the chromatic polynomial of a graph), and sometimes a quasi-polynomial.
Generally speaking, a quasi-polynomial is a generalization of polynomials, of which the coefficients may not come from a ring
but instead are periodic functions with integral period.
One of the most classical examples is the Ehrhart quasi-polynomial that counts the number of integral points in the q-fold dilation of a rational polytope.
In the arrangement theory, a quasi-polynomial appears when we count the size of the complement of an integral hyperplane arrangement modulo q -
the characteristic quasi-polynomial due to Kamiya-Takemura-Terao.
In the first part, we introduce the notion of (Worpitzky-)compatible subsets of an irreducible root system together with an associated Eulerian polynomial,
which brings the characteristic and Ehrhart quasi-polynomials into one formula.
We also show that, notably, any ideal of the root system is compatible.
This part is based on a joint work with A. U. Ashraf (Western Ontario) and M. Yoshinaga (Hokkaido).
In the second part, we continue the discussion in the first part with a focus on type A root systems.
We show that the compatible graphic arrangements are characterized by cocomparability graphs.
This can be regarded as a counterpart of the characterization by Stanley and Edelman-Reiner of free
and/or supersolvable graphic arrangements in terms of chordal graphs.
This part is based on a recent joint work with A. Tsuchiya (Tokyo).
(講演のノートです。) [PDF]
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第58回
Zoomによるオンライン配信と通常の対面形式
日時:2020年10月3日(土曜)13:30~17:00
講演者:河村 彰星(京都大学数理解析研究所)
題目:周期的スケジューリングと密度限界
要旨:整数全体を何色かに塗り分けたい。但し各色について、それを塗る間隔の下界(ないし上界)が定まっている。
塗り分けが可能なのは如何なるときであろうか。これは「設備の保守」「警備」「献立」「広告の表示」などのスケジューリングに現れる問題といえる。
必要条件、十分条件や判定の計算量について考える。
(講演のスライドです。) [PDF]
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第57回
Zoomによるオンライン配信と通常の対面形式
日時:2020年7月4日(土曜)13:30~17:00
講演者:柴田 孝祐(岡山大学大学院自然科学研究科)
題目:Specht idealについて
要旨:標数0の体を考えたとき、n次対称群の表現論で重要な役割を担うものとして、nの分割に付随する「Specht加群」がある。
その構成にはいくつかのn変数多項式を用いており、それらの多項式が生成する多項式環のイデアルをSpecht idealと呼ぶ。
本講演では、まずSpecht加群に関する基本的な事項を説明し、その後Specht idealの環論的、及び組合せ論的性質を述べる。
特に講演者と柳川氏の共同研究によって得られた、いくつかの分割に対するSpecht idealのHilbert級数や、Specht加群を用いた極小自由分解の記述を述べる。
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第56回
Zoomでのオンライン開催
日時:2020年6月6日(土曜)15:00~17:00
講演者:Yunhyung Cho (Sungkyunkwan University)
題目:Counting Gelfand-Cetlin type string polytopes
要旨:Let G be a complex semisimple Lie group and W the Weyl group of G.
For each choice of a reduced word i of the longest element of W and a weight λ,
one can associate a string polytope which parametrizes the dual canonical basis elements of the irreducible representation with highest weight λ.
A Gelfand-Cetlin type polytope is a string polytope having minimum number of vertices.
In this talk, we will prove that, in case that G = U(n+1), the number of Gelfand-Cetlin type polytope is precisely 2n.
If time permits, I will explain a generalization of this result and illustrate a recursive formula for counting the number of reduced words
representing a given commutation class. This is joint work with Jangsoo Kim and Eunjeong Lee.
(講演のスライドです。) [PDF]
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第56回
日時:2020年4月18日(土曜)13:30~17:00
新型コロナウィルスの影響により、中止になりました。
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第55回
日時:2020年1月24日(金曜)13:30~17:00
講演者:久保田 匠(東北大学大学院情報科学研究科)
題目:代数的グラフ理論から見た量子ウォークの世界
要旨:本講演は、代数的グラフ理論や量子ウォークに馴染みがない方を対象に、両分野の全体像を示し、雰囲気を掴んで頂くことを目的とする。
グラフの定義やグラフ固有値の基本性質を見るところから始める。まずは、強正則グラフの固有値が計算できる理屈を話す。
次に、グラフ上量子ウォークでは定番の Grover walk を定義し、スペクトル写像定理を紹介する。
本定理によって代数的グラフ理論と量子ウォークは密接に結びつく。
最後に、量子ウォークの周期性に関する話題を取り上げ、周期性をもつ具体的なグラフをいくつか紹介し、それらが実際に周期的であることを確かめる。
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第54回
日時:2019年11月9日(土曜)13:30~17:00
講演者:松本 直己(慶応義塾大学DMC統合研究センター)
題目:Graph grabbing gameに関する諸問題
要旨:Graph grabbing gameとは,頂点に重み(得点)が付いた連結グラフからAliceとBobが交互にグラフの連結性を保ったまま頂点を取り除き,
相手より多くの得点を獲得するグラフ上の組合せゲームである.
本講演では,Graph grabbing gameとそのバリエーションに関する最近の研究動向と未解決問題を紹介する.
(講演のスライドです。) [PowerPoint]
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第53回
日時:2019年8月30日(金曜)13:30~17:00
講演者:石井 基裕(群馬大学教育学部)
題目:半無限Young盤がつくる柏原結晶
要旨:A型Lie環の表現論とYoung盤の組合せ論との間の関係の拡張として、ねじれのないA型アフィン量子群のレベル・ゼロの表現論を用いて、
Young盤の類似物である「半無限Young盤」を導入する。そして、半無限Young盤がつくる柏原結晶について述べる。
前半は、アフィン量子群のレベル・ゼロ端ウェイト加群の結晶基底と、それを実現する半無限Lakshmibai-Seshadri (LS)
パスの柏原結晶について述べる。ここで、端ウェイト加群とは、可積分最高ウェイト加群を含む加群のクラスであり、
本講演では有限次元半単純Lie環における有限次元表現に相当するものであると考えて議論を展開する。
また、半無限LSパスとは、アフィンWeyl群の元の半無限Bruhat順序に関する減少列として与えられる組合せ論的対象であり、
Young盤の一般化ともみなすことができるものである。
後半は、前半で述べた内容を、ねじれのないA型アフィン量子群の場合に詳述し、半無限Young盤を導入する。
そして、半無限Young盤がつくる柏原結晶がレベル・ゼロ端ウェイト加群の結晶基底の実現を与えること、
その柏原結晶としての構造の具体的な記述、半無限Bruhat順序の判定法への応用などについて述べる。
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第52回
日時:2019年6月1日(土曜)13:30~17:00
講演者:朝山 芳弘(横浜国立大学環境情報学府)
題目:閉曲面上のグラフとグラフ彩色
要旨:位相幾何学的グラフ理論では,平面をはじめとする閉曲面上に埋め込まれたグラフの構造や性質について研究する学問であり,
四色定理をはじめとしたさまざまなグラフ彩色の研究がおこなわれています.
本講演では,閉曲面上に埋め込まれたグラフにおける古典的なグラフ彩色に関する結果をいくつか紹介したのち,
彩色の様々なバリエーションについて発表させていただきます.
キーワード:平面グラフ,グラフ彩色 (list coloring, DP-coloring, signed coloring, polychromatic coloring, dynamic coloring, distinguishing coloring)
(講演のスライドです。)[PowerPoint]
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第51回
日時:2019年3月23日(土曜)13:30~17:00
講演者:清水 理佳(群馬工業高等専門学校)
題目:(前半)結び目射影図の既約度について (後半)結び目の行列表示とパズルについて
要旨:
(前半)
結び目の射影図が可約であるとは、ある交点において同じ領域が対角に向かい合っていることをいいます。可約でないとき既約であるといいます。
結び目射影図における、交点を減らす局所変形で、半ひねりスプライスというものがあります。
この半ひねりスプライスを使って結び目射影図がどれぐらい既約であるか(何回で可約にできるか)を表す指数、既約度について紹介いたします。
任意の非自明な結び目射影図の既約度は4以下であることがわかっている一方で、既約度がちょうど4である結び目射影図はみつかっていません。
講演者は既約度が4の結び目射影図をみつけるために(またはないことを示すために!?)四色問題の歴史等を参考にしながら
これまで色々な取り組みをしてきたので、紹介させていただきます。
(講演のスライドです。)[pdf] [PowerPoint]
(後半)
向き付けられた結び目図式を基点から1周たどるとき、各交差点を2回ずつ通るのですが、先に下を通る交差点の個数のことを、その基点におけるひずみ度といいます。
本講演では、向き付けられた結び目をひずみ度を用いて一意に表す行列表示、ひずみ度行列について紹介いたします。
ひずみ度行列のタテとヨコの性質を使ったパズルも紹介いたします。
(講演のスライドです。)[pdf] [PowerPoint]
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第50回
日時:2018年12月22日(土曜)13:30~17:00
講演者:枡田 幹也(大阪市立大学大学院理学研究科)
題目:Bruhat interval polytope について
要旨:n次置換を自然にn次元ユークリッド空間の点と思い,すべてのn次置換の凸包をとったものを置換多面体(permutohedron)という.
置換多面体は旗多様体や permutohedral varietyのモーメント写像の像として現れ,幾何学的にも面白い.
n次置換の集合には Bruhat 順序があり,順序関係がある2つのn次置換から Bruhat interval polytope と呼ばれる凸多面体が置換多面体内に定まる.
最近 Tsukermann-Williams (Adv. Math. 285 (2015), 766-810) により Bruhat interval polytope の組合せ的性質が調べられた.
本講演では,Bruhat interval polytopeに関して彼らの結果を交えながら最近考えたことを紹介する.
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第49回
日時:2018年10月13日(土曜)13:30~17:00
講演者:松村 朝雄(岡山理科大学理学部)
題目:シューベルトカルキュラスと対称多項式
要旨:前半は、シューベルトカルキュラスの概要を、古典的な部分空間な数え上げの話から説明し、Schur多項式との関連を説明します。
後半は、Schur多項式やGrothendieck多項式のタブロー公式や行列式公式などさまざまな具体的な公式に関して最近の話題も含めて概説します。
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第48回
日時:2018年7月13日(金曜)13:30~17:00
講演者:佐竹 翔平(神戸大学大学院システム情報学研究科)
題目:ランダムグラフがもつ性質について
要旨:ランダムグラフの理論は1950年代にP.ErdösとA.Rényiにより提唱され,
例えば,組合せ論的な問題への1つの有効なアプローチとして,盛んに研究されています.
前半では,ランダムグラフに関する基本的な定義と,先行研究における組合せ論的問題 (Ramsey数,グラフの自己同型群など)への応用例を紹介します.
後半では,ランダムグラフが「確率1」で満たす性質について紹介し,それらの関係(差異)についての結果を述べます.
また上記の性質に着目したRamsey数への応用についても言及する予定です.
(講演のスライドです。)[pdf1] [pdf2]
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第47回
日時:2018年4月21日(土曜)13:30~17:00
講演者:平尾将剛(愛知県立大学情報科学部)
題目:QMCデザインと球面上のランダム点配置について
要旨:Brauchart et al. (2014) により,単位球面上の QMC (準モンテカルロ) デザイン系列が導入された.
これは球面上の積分を近似する点集合の系列で,より良い誤差の収束を実現するものである.
本講演では球面デザインの定義からはじめ,QMCデザインの定義とこれらの問題意識を紹介する.
さらに講演の後半では球面上の「良い」ランダム点配置として知られる行列式点過程やジッタードサンプリングを紹介し,
それらとQMCデザインとの関係を紹介する.
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第46回
日時:2018年1月20日(土曜)13:30~17:00
講演者:渡邊悠太(東北大学大学院情報科学研究科)
題目:有限射影幾何の組合せ構造の代数的性質について
要旨:有限射影幾何の大域的な結合関係から定まる結合代数は、量子代数$U_q(\mathfrak{sl}_2)$の準同型像として実現されることが知られている。
本講演では、「より詳細な結合関係」を用いて結合代数を拡張することで、局所的な組合せ構造も反映する2種類の代数を導入する。
そして、それらの代数が量子アファイン代数$U_q(\widehat{\mathfrak{sl}}_2)$の準同型像を用いて実現されることを紹介する。
さらに、GrassmannグラフのTerwilliger代数やクラス1のアソシエーションスキームの一般化リース積のBose-Mesner代数と
今回導入した代数との関連についても述べる。
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第45回
日時:2017年11月25日(土曜)13:30~17:00
講演者:百合草寿哉(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
題目:団代数と角の完全マッチング
要旨:団代数は有向グラフから定義される組合せ論的構造を持つ代数である。
定義が少し複雑なため、団代数の入門的な話から始める。本講演では、曲面の三角形分割から定義される団代数に焦点を絞り、
基本的な対応を紹介する。講演の最終目標は、角の完全マッチングを導入し、団展開公式と呼ばれる公式を1つ与えることである。
時間が許せば、角の完全マッチング、二部グラフの完全マッチング、ポテンシャル付き箙の切断等の組合せ論的対象の間の対応も与える。
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第44回
日時:2017年9月2日(土曜)13:30~17:00
講演者:上岡 修平(京都大学大学院情報学研究科)
題目:可積分系から得られる平面分割のよい分配関数
要旨:ヤング図形の各ますに数字を各行各列が広義単調になるように書き込んだものを平面分割という。
平面分割は母関数が厳密に書き下せるなどよい性質を持っており、またそこから表現論的な解釈が見つかるなどして近年でもさかんに研究されている。
本講演では平面分割の「よい」すなわち積表示を持つ母関数および分配関数ついて可積分系の視点から考察する。
まずMacMahonの母関数など既存の結果について概説し、その後、可積分系のひとつである離散2次元戸田分子に関する講演者の研究を紹介する。
ひとことで言うと「離散2次元戸田分子の任意の非零解から、平面分割のよい分配関数(重みと積表示のペア)が得られる」という話をする。
(講演のスライドです。)[pdf]
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第43回
日時:2017年6月17日(土曜)13:30~17:00
講演者:古谷 倫貴(北里大学一般教育部)
題目:グラフの禁止構造条件について
要旨:与えられた(グラフ上の)性質Pに対して,グラフがPを満たすためには,どのような部分構造を制限すれば良いだろうか.
このような問題は,強理想グラフ定理やMatthews-Sumner予想をはじめとして,グラフ理論において数多く研究されてきた.
本講演の前半では,完全マッチングやハミルトン閉路などの性質を中心に,グラフの禁止構造条件に関する既存の結果を紹介する.
また後半では,与えられたグラフの禁止構造条件を満たすグラフのクラス自体の性質やそれらの比較について,講演者のこれまでの結果を中心に解説する.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第42回
日時:2017年3月9日(木曜)13:30~17:00
講演者:井上 侑平(東北大学大学院情報科学研究科)
題目:Thompson の F と四色定理と絡み目
要旨:講演者の目的は四色定理の再証明である.
Thompson の F は二分木のペアで構成された群であり四色定理と深い関わりをもつ.
また F は結び目理論とも関わりをもつことが知られている.
F 及び四色定理との関係, 再証明と絡み目に関する講演者の最近の結果を紹介する.
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第41回
日時:2016年12月9日(金曜)13:30~17:00
講演者:田中 立志(京都産業大学理学部)
題目:多重ゼータ値の組合せ論的側面について
要旨:古典的な多重ゼータ値(MZV)について, 次元予想やダブルシャッフル構造などの入門的な話から始める.
その上で, 講演者のこれまでの結果も含め, MZVの特殊値や関係式などに関するさまざまな事柄について組合せ論的な視点を強調しつつ説明したい.
現時点では, Bowman-Bradleyの定理, 巡回和公式, 山本積分, arborified MZVなどについて話したいと考えている.
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第40回
日時:2016年10月21日(金曜)13:30~17:00
講演者:阿部 拓郎(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
題目:超平面配置の自由性研究に関する最近の進展と話題
要旨:超平面配置とはベクトル空間中の超平面の有限族であり、その研究はワイル群の鏡映の鏡映面を集めたワイル配置の研究に端を発する。
ワイル配置はワイル群と同等のデータを持つ大変良い配置であるため、超平面配置の中でどのような配置が『良い』配置か、という研究方針が存在する。
その中で、ワイル群の持つ指数(exponents)が定義できる配置という方向での一般化が自由配置であり、超平面配置研究の歴史において重要な役割を果たしてきている。
本講演では、自由配置の性質と、どのような配置が自由となるかの判定法の歴史及び最近の進展について述べる。
特に、吉永正彦氏による代数幾何的視点を用いた吉永の判定法、寺尾宏明氏による加除定理、そして講演者による剰余定理について説明したい。
さらに時間が許せば、自由配置のルート系への応用についても述べる。具体的には、イデアル配置と呼ばれるワイル配置の部分配置の自由性を用いた、
regular nilpotent Hessenberg varietyのコホモロジー環の表示について述べたい。
この部分は、堀口達也氏、枡田幹也氏、村井聡氏、佐藤敬志氏との共同研究である。
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第39回
日時:2016年7月29日(金曜)13:30~17:00
講演者:Robert Davis(Michigan State University)
題目:Ehrhart Theory, Unimodal Sequences, and Reflexive Simplices
要旨:Each lattice polytope P has a corresponding rational function, called its Ehrhart series,
which encodes how many lattice points exist in dilations of P.
The numerator of the Ehrhart series can tell us a surprising amount about the polytope,
but there are still many questions left to be answered.
For example, if the coefficients of this polynomial are unimodal, then what can we say about P?
Often, there is interesting algebraic structure that is waiting to be discovered.
This talk will discuss the basics of Ehrhart theory, techniques for establishing unimodality,
and recent developments in the case of reflexive simplices.
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第38回
日時:2016年6月18日(土曜)13:30~17:00
講演者:三枝崎 剛(山形大学地域教育文化学部)
題目:デザイン理論について
要旨:(前半)
組合せデザイン,球面デザインに関する基本的な事柄を紹介する.
(後半) 前半にて議論したデザイン理論と,不変式・モジュラー形式との関係について,講演者の最近の結果を含めて紹介する.
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第37回
日時:2016年4月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:篠原 雅史(滋賀大学教育学部)
題目:(前半)よい距離集合の分類問題について  (後半)よい集合族の分類問題について
要旨:
(前半)d 次元ユークリッド空間上の有限集合Xに対して,X の異なる 2 点間ユークリッド距離が丁度 s 個表れるとき,
Xをs-距離集合という.与えられた次元 d と距離の個数 s に対して,大きな頂点数をもつXを分類すること,または,
そのようなものを特徴付けることが,距離集合における研究の主問題である.
ここでは,低い次元の場合を中心に距離集合の分類問題について紹介する.
(後半)n個の元からなる集合の部分集合族に条件を付けて,その条件下で集合族のサイズを最大化(または最小化)
するとき,サイズの最大値は何か,また最大値を与える集合族は何かといった問題について考える.
ここでは,はじめに Erdos-Ko-Rado の定理を紹介し,その定理の一般化について眺める.
また,徳重氏・フランクル氏との共同研究で得られた結果について紹介する.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第36回
日時:2016年2月19日(金曜)13:30~17:00
講演者:野口 健太(東京電機大学情報環境学部)
題目:曲面上のグラフの彩色 ~種数の増加,面の制限及び局所平面性~
要旨:位相幾何学的グラフ理論では,曲面上のグラフ(曲面上に辺の交差なく描かれたグラフ)に関する頂点彩色・辺彩色の研究がさかんに行われている.
本講演では,曲面上のグラフの彩色問題を,以下の流れに沿って解説する.知られている結果と未解決問題を関連付けながら,
それぞれの彩色の手法も紹介する.また最近得られた結果についても述べる予定である.
平面グラフに対する四色問題
→種数を上げた曲面での Map Color Theorem
→面の形を制限したグラフの染色数
→局所平面性を持ったグラフの染色数
(講演のスライドです。)[PowerPoint]
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第35回
日時:2015年12月18日(金曜)14:00~17:00
講演者:伊東 桂司(東北大学情報科学研究科)
題目:有向グラフのskew energyについて
要旨:有向グラフの歪隣接行列の固有値の絶対値の総和をskew energyと呼び,
C. Adiga, R. Balakrishnan, W. So(2010)らによって定義された.
skew energyは,無向グラフのenergyに対応する有向グラフの概念である.
本講演では,treeやcycleなどのさまざまな有向グラフのskew energyについて紹介する.
特に,tournamentと呼ばれる任意の2頂点の間に有向辺が存在するような有向グラフに対し,
skew energyの最小値と最大値を与える.また、それらを達成するようなtournamentを分類することによって,
Hadamard行列などと関連していることについて述べる.
最後に,skew energyを拡張した概念であるα-skew energyについても紹介する.
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第34回
日時:2015年10月17日(土曜)13:30~17:00
講演者:和地 輝仁(北海道教育大学(釧路校))
題目:ピックの公式の変種とその一般化
要旨:どの座標成分も整数である点を格子点と呼び、格子点を頂点に持つ多面体を整多面体と呼ぶ。
整多角形の面積公式として有名なものは、1899年のPickの公式であり、
これは、1957年にReeveにより3次元に拡張され、1963年にMacdonaldにより一般次元に拡張された。
また、その後もPickの公式に関係する結果が発表されてはいるので、そのいくつかも紹介する。
Pickの公式の変種として森原の公式というものがある。これは格子点ではなく、
単位整正方形の重心の点の数を勘定する面積公式である。
この公式はPickの公式の系ととらえるのが簡明で、その証明や一般化を紹介する。
Pickの公式の別の変種として額賀の公式がある。これは、点を勘定するのではなく、
軸と垂直ではない辺の数を勘定する面積公式である。この公式の一般化も可能であり、
講演者はエルハート多項式の変種を用いて証明した。本講演の後半ではこの証明についても紹介する。
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第33回
日時:2015年8月7日(金曜)13:30~17:00
講演者:松井 泰子(東海大学理学部情報数理学科)
題目:グラフのコスト点彩色問題について
要旨:グラフの彩色は,有名な四色定理をはじめとして豊富なバリエーションが存在し,
多くの研究成果や未解決問題が知られている.グラフのコスト点彩色問題は,
色にコストが与えられた時に,コストの総和が最小となる点彩色を求める最適化問題で,
1989年にKubickaらにより提案されて以来,現在まで盛んに研究されている.
コスト点彩色問題は,一般のグラフに対してはNP-hardであるが,木などのグラフでは
多項式時間で解けることが分かっている.
本講演では,グラフのコスト点彩色問題に対する既存の研究結果と未解決問題,
そして発表者による,最適彩色の列挙解法を紹介する.
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第32回
日時:2015年4月18日(土曜)13:30~17:00
講演者:中島 規博(豊田工業大学)
題目:代数的な誤り訂正符号の符号化と復号化について
要旨:誤り訂正符号の符号化・復号化のプロセスでは,
ディジタル通信などにおいて生じる誤りを自動的に修正し元の情報を復元することを目的とする.
宇宙船通信の分野では,訂正能力の高い代数的符号であるReed-Solomon(RS)符号・Golay符号・Reed-Muller(RM)符号などの
復号法の研究が進み,1972年のマリナー計画では符号長32の1次RM符号を使って火星写真の電送に成功した.
本講演では前半によく知られるRS符号の符号化・復号化のアルゴリズムを述べ,
後半にRM符号の射影化として定義された射影RM符号の復号法について豊田工業大学松井一氏との共同研究で得られた結果を発表する.
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第31回
日時:2015年2月20日(金曜)13:30~17:00
講演者:谷川 眞一(京都大学数理解析研究所)
題目:グラフの剛性の組合せ的特徴付けについて
要旨:ユークリッド空間内に埋め込まれたグラフの各辺を棒材,各頂点を節点と捉えることで
グラフの局所剛性や大域剛性を定義することが出来る.一般的な埋め込みに対する剛性は一般剛性と呼ばれており,
Asimov-Roth(1978)によって一般局所剛性が,Gortler-Healy-Thurston(2010)によって一般大域剛性がグラフの性質であることが示されている.
2次元の場合,Maxwellの条件によってグラフの一般局所剛性が組合せ的に特徴付けされることがLaman(1971)によって示されているが,
3次元以上の場合においてはMaxwellの条件は十分ではなく,特に3次元一般剛性の組合せ的特徴付けは剛性理論における重要な未解決問題である.
同様に大域剛性に対しては,2次元の場合Connelly(2005)とJeckson-Jordan(2005)によって組合せ的特徴付けが与えられ,
3次元以上は未解決である.本講演では,グラフの一般剛性の組合せ的特徴付けに関し,主要な成果を概説し,
3次元剛性に関する講演者の最近の成果や近年活発に研究が行われている対称性を有するグラフなどへの展開を紹介する.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第30回
日時:2015年1月23日(金曜)13:30~17:00
講演者:籾原 幸二(熊本大学教育学部数学科)
題目:Gauss periodとそれに関連する組合せ論
要旨:
Gauss period(およびGauss和)の概念は, Gaussによって導入された(古典的な)整数論的概念であり,
様々な代数方程式の根の数をカウントするのに応用されてきた. 一方で, Gauss periodは, 組合せ論と非常に相性がよい.
例えば, 符号理論においては, ある巡回符号(トレース符号)の重み分布の計算, デザインにおいては,
ある差集合(Singer差集合の商差集合など)や有限体上の良い関数(bent関数など), アソシエーションスキームでは,
有限体上の強正則グラフやより一般のクラス数でのトランスレーションスキーム,
また, 有限幾何における超平面交差の問題やConicに関する問題などと関係があり,
本質的にGauss periodおよびGauss和に関する問題に帰着される場合が多い.
本講演では, Gauss periodやその周辺の概念の定義から始めて, 上述の組合せ論に関する既知の結果について解説を行い,
時間があれば, ある一定の数の値をとるGauss periodの分類に関する私の最近の結果についても紹介したい.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第29回
日時:2014年11月29日(土曜)13:30~17:00
講演者:松本 ディオゴけんじ(早稲田大学理工学術院基幹理工学部)
題目:擬群を用いたダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成とテンソル圏を用いた一般化
要旨:本講演ではいくつかの具体的な例を用いてヤン・バクスター写像とその拡張であるダイナミカル・ヤン・バクスター写像について紹介をする.
特に前半では擬群(左擬群)と呼ばれる群を一般化した非結合な代数系を用いたダイナミカル・ヤン・バクスター写像の構成法を中心として解説を行う.
擬群はラテン方陣とも関連する代数系であり,この構成法により得られるダイナミカル・ヤン・バクスター写像との関係についても述べる予定である.
後半では前半で構成した擬群(左擬群)上のダイナミカル・ヤン・バクスター写像についてテンソル圏を用いて記述し一般化をする.
また,この一般化により得られる新しい例についても可能であれば紹介をする予定である.
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第28回
日時:2014年10月17日(金曜)13:30~17:00
講演者:奥田 隆幸(広島大学大学院理学研究科)
題目:球面符号の理論における Delsarte の線形計画法およびその一般化について
要旨:
(前半) 球面符号の定義や問題意識から始めて Delsarte の線形計画法の アイディアについてかなり詳細に述べる.
特に球面上の調和解析と再生核についてダイジェストで紹介する予定である.
(後半) Delsarte の線型計画法のアイディアが ``球面上の二角形の合同類集合 '' に根差したものであることを確認し,
その上でより一般化する形で ``球面上の三角形の合同類集合''に着目するとい う Bachoc--Vallentin の半正定値計画法の手法を紹介する.
特に球面符号についての彼らの結果や, 講演者が Wei-Hsuan Yu (Michigan State Univ.) との共同研究で得た最近の結果についても紹介したい.
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第27回
日時:2014年9月20日(土曜)13:30~17:00
講演者:澤 正憲(神戸大学大学院システム情報学研究科)
題目:統計的最適点配置問題について(前半),Hausdorff方程式と準直交多項式の零点について(後半)
要旨:
(前半)例えば,シェ-ルガスの埋蔵状況が知りたいとして,地表のどこに掘削点を設置すれば良いでしょうか.
このような「良い」掘削点の配置問題は,最適計画(Optimal design)という統計的最適点配置問題の範疇に含まれます.
本講演の前半では,何をもって「最適」な点配置と呼ぶのか説明し,またそのような点配置の設計方法(構成法)等についてお話しします.
(後半)Hilbert恒等式(Hilbert identity)の存在性に関するHilbertの有名な定理(Math. Ann., 1909)の組合せ的別証明を与えます.
また,この別証明に関連して,ある代数方程式系(Hausdorff方程式と呼ぶ)とエルミート準直交多項式の零点の相互関係に触れ,
さらにエルミート準直交多項式の零点の有理性について論じます.(エルミート多項式の零点が有理数でないことはよく知られています.)
(前半の講演のスライドです。)[PowerPoint]
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第26回
日時:2014年8月23日(土曜)13:30~17:00
講演者:谷口 哲至(松江工業高等専門学校)
題目:ホフマングラフとグラフの階層構造
要旨:ライングラフの最小固有値が$-2$以上であることは良く知られている。
これにより、最小固有値によるグラフの階層構造を知ろうという問題が自然と生じるのだが、
(良く知られている)ライングラフの構成法では最小固有値が-2よりも小さいグラフを構成する事はできない。
そこで R. Woo と A. Neumaier [1]は、グラフの「辺」を「点」で置き換えるという単純な作業である
ライングラフの構成法を高度に一般化し、最小固有値が-2よりも小さいグラフの構成法を定式化した。
[1]では、最小固有値$-1-\sqrt{2}$以上のグラフが分類されている。
それには(9種類の)ホフマングラフと呼ばれる特別なグラフ達の和の概念が用いられており、
そこにホフマングラフの既約性と共にルート系との関わりも生じる。
これこそ最小固有値によるグラフの階層構造を解明する道であり、
更に階層を降りる為に更に多くのホフマングラフを知る必要がある。
本講演ではグラフの固有値研究についての先行研究、ホフマングラフについての基本的な概念、
そしてグラフの最小固有値問題についてこれまでの成果を紹介する。
[1] R. Woo and A. Neumaier,
"On graphs whose smallest eigenvalue is at least $-1-\sqrt{2}$",
Linear Algebra Appl. 226-228 (1995), 577--591.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第25回
日時:2014年7月5日(土曜)13:00~17:30
講演者:見村 万佐人(東北大学大学院理学研究科)
題目:エクスパンダーグラフへの招待~幾何学的群論とのクロスオーバー
An introduction to expander graphs: a crossover with geometric group theory
要旨:次数の上界の定められ、直径が発散するような有限グラフの列が「等周定数の一様な下からの正の評価をもつ」とき、
そのグラフの列をエクスパンダーグラフ(ないしはエクスパンダーグラフ列)といいます。エクスパンダーグラフは定義から、
「辺の切断に頑強」という意味で“効率の良い”ネットワークとなっており、計算機科学の方向から多くの研究がなされているようです。
一方、大変面白いことに、エクスパンダーグラフはヒルベルト空間などの扱いやすい距離空間への埋め込みに関しては
“最悪”なグラフ列であることも明らかになりました。この観点から、一部の数学においては、エクスパンダーグラフを
“非常に扱いの悪い”グラフと見て、扱いのよく“従順”な対象との比較をすることにより、
エクスパンダーグラフの新たな数学的意義が生み出されつつあります。
また、そもそもエクスパンダーグラフが存在することも定義からは不思議に見えます。存在性はまず確率論的に示されましたが、
その後、G. A. マルグリスによって、“ある種の群論”を用いて初の具体的な構成が得られました。
この群論は、群をそのケーリーグラフによりグラフ距離空間とみたり群の幾何学的対象への等長作用を考えたりすることで調べるもので、
(広い意味で)「幾何学的群論」と呼ばれています。講演者の専門はこの分野です。
本講演ではエクスパンダーグラフの定義や基本的な性質から始めて、「バナッハ空間への距離埋め込み」をキーワードに、
“扱いの悪い”側面のエクスパンダーグラフの現れる数学の世界について概説をいたします。
後半では、実際にどのように「幾何学的群論」がエクスパンダーグラフの研究と交わっていくのか、について講演者による最近の進展をお話しします。
そこでのアイディアの発端となったのは、組み合わせ論(的グラフ理論)におけるある定理です。
本講演が「幾何学的群論」の視点からのエクスパンダーグラフへの招待となればと考えております。
なるべく予備知識を仮定せずにご説明いたしますので
(バナッハ空間および群のバナッハ空間への線型表現の定義をお思い起こし下されば充分かと存じます)、気軽にお越しください。
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第24回
日時:2014年5月24日(土曜)13:30~17:00
講演者:落海 望(湘南工科大学工学部)
題目:非順序2分木における“covering number”について
要旨:葉に相異なるラベルが振られた(根付き)非順序2分木を考える.
この型の木は,ブロードキャストタイプの暗号において鍵を管理する際に使用されており,
組合せ論以外の分野でも非常に興味深い.
木を固定しラベルの部分集合の元が振られている葉から根までのノードと,
そこから出ているパスをすべて取り除くと林ができる.本講演では,
その林を構成する木の個数を“covering number”と呼び暗号とのつながりを紹介し,
その個数についての幾つかの結果について紹介する.
また,時間があれば,パーフェクトマッチングとの関係性についても述べたいと思う.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第23回
日時:2014年4月25日(金曜)13:30~17:00
講演者:須田 庄(愛知教育大学 数学教育講座)
題目:Hadamard行列に関連する組合せ構造
要旨:アブストラクト:Hadamard行列とは成分を1,-1とする正方行列で相異なる各行,各列が直交するものである。
非常に素朴な構造であるものの、デザイン理論、距離正則グラフ、スピンモデルなど
代数的に正則性の高い組合せ構造と密に関連している。
本講演では代数的グラフ理論の観点からHadamard行列について概観し、
mutually unbiased basesや講演者の最近の研究で得られた結果(mutually quasi-unbiased weighing matrices)や
skew-Hadamard行列に関連する複素球面上のコードについて話をする。
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第22回
日時:2014年3月14日(金曜)13:30~17:00
講演者:三浦 真人(東京大学大学院 数理科学研究科)
題目:日比トーリック多様体とミラー対称性
要旨:日比トーリック多様体に退化する射影多様体やその超曲面完全交叉に対しては、
幾何を調べるのに、半順序集合の組み合わせ論が役に立つ。たとえば、Gonciulea と Lakshmibai は、
ミナスキュール・シューベルト多様体という特異な多様体が日比トーリック多様体に退化することを示したが、
ミナスキュール・シューベルト多様体の特異点を一から調べるより、退化先の組み合わせ論を用いて
間接的な計算をすれば目的に適う、というような状況がよくある。
3次元カラビ・ヤウ超曲面完全交叉のホッジ数の計算はその一例である。
今回の講演では、実例を通じてこの種の計算テクニックを紹介し、ミラー対称性への応用について説明する。
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第21回
日時:2014年2月14日(金曜)13:30~17:00
講演者:佐野 良夫(筑波大学 システム情報系)
題目:線形マトロイドとマトロイド連結性
要旨:マトロイドとは、ベクトル空間における線形独立性の概念を一般化して定義される組合せ構造であり、
1935年にH. Whitneyによって導入された。また、マトロイドは、効率のよいアルゴリズムと密接な関係があるため、
組合せ論の分野だけでなく、離散最適化の分野においても重要な概念の1つとして考えられおり、
多くの研究者により研究されてきた。
本講演では、マトロイドの定義、同値な各種の公理系、基本的な例を紹介することから始め、
行列表示を持つようなマトロイドである線形マトロイドについて、および、マトロイドにおける連結性に関する
いくつかの話を紹介したいと思う。
(講演のスライドです。)[pdf]
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第20回
日時:2014年1月18日(土曜)13:30~17:00
講演者:原 靖浩(大阪大学大学院 理学研究科)
題目:Borsuk-Ulam の定理のグラフ理論への応用について
要旨:Lovászはグラフに対してneighborhood complex と呼ばれる単体複体を定義し、その位相を調べ、
Borsuk-Ulam の定理を適用することによりKneserグラフの彩色数に関する予想を解決した(1978年)。
その後に定義されたグラフのbox complex と呼ばれる単体複体は neighborhood complex とホモトピー同値なもので、
位数2の群が作用し、グラフ準同型からは同変写像を誘導するようなものになっている。
本講演では、Borsuk-Ulam の定理に関係するいくつかの不変量を box complex に対して考え、
それとグラフの彩色数との関係について具体例の計算を交えて解説する。
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第19回
日時:2013年12月13日(金曜)13:30~17:00
講演者:宮田 洋行(東北大学大学院 情報科学研究科)
題目:多面体・近傍的多面体の組合せ型の列挙
要旨:多面体の組合せ型(面束の同型類)は、多面体の f-vector や直径、可能な単体分割などさまざまな重要な情報を含み、
古くから組合せ型に基づいた多面体の分類が行われてきている。
本講演では前半・後半に分け、関連する次の2つの話題についてお話しする。
1. 多面体の組合せ型の列挙
多面体の組合せ型の列挙は、多面体の理解を深める上で非常に重要な問題であるが、実は多面体の
組合せ型を認識すること自体が、一般の整数係数の多変数多項式の等式・不等式系の可解性判定と同程度に
難しいことが分かっており、比較的小さなサイズでさえ列挙は決して容易ではない。
本講演では、上記のような背景や列挙が比較的容易なクラスなど、多面体の組合せ型列挙の周辺についてお話しした後、
9頂点5次元多面体の組合せ型の列挙を達成した福田公明教授(ETH Zurich)、森山園子准教授(東北大)との共同研究を紹介しつつ、
多面体の組合せ型の列挙法やその応用についてお話しする。
2. 近傍的多面体の組合せ型の列挙
近傍的多面体とは、頂点数が同じ多面体の中で各次元の面数を最大化する多面体である。
この定義からは、一見、近傍的多面体は非常に特殊な多面体のように思われるが、
実は組合せ型の数のオーダーが漸近的には多面体全体とそれほど違わないなど、構造の豊富性を示すさまざまな結果や予想があり、
大変興味深い多面体クラスである。本講演では、そのような近傍的多面体の背景についてお話しした後、
近傍的多面体の有向マトロイド的抽象化である近傍的有向マトロイド多面体について、従来の列挙を大幅に拡張し、
(d,n) = (4,11), (5,10), (6,11), (7,11), (8,12) (d:次元、n:頂点数)の場合の列挙を新たに達成した
Arnau Padrol 氏(FU Berlin) との共同研究やその応用についてお話しする。
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第18回
日時:2013年11月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:岡崎 亮太(福岡教育大学 教育学部)
題目:Buchsbaum 複体入門
要旨:単体的複体 Δ は,付随する Stanley-Reisner 環が Buchsbaum であるときに,Buchsbaum であるという.
Buchsbaum 性は Cohen-Macaulay 性の一般化となっており,また,Δ(の幾何学的実現)が位相多様体であるとき,
Δは必ずBuchsbaum となることが知られている.
本講演では,可換環論における Buchsbaum 加群の歴史や性質について簡単に紹介し,
古くから知られる Buchsbaum 複体の f-vector や h-vector に関する性質について,
Schenzel の結果を中心に紹介する.
(講演用の資料です。)[pdf]
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第17回
日時:2013年10月26日(土曜)13:30~17:00
講演者:小林 雅人(埼玉大学大学院 理工学研究科)
題目: Combinatorics on bigrassmannian permutations and essential sets
要旨: 本講演では、対称群の代数的組み合わせ理論をバイグラスマニアン置換と
本質的集合の二つの観点から紹介する。著者の2010-2013の結果も交えて話したい。
前半では、コクセター理論を活用して新しい統計、符号つきバイグラスマニアン多項式を導く。
その背後には、行列の総非負性やDesnanot-Jacobiの公式がある。
後半では、Fultonによる本質的集合の交代符号行列への応用にふれる。
さらに、Eriksson-LinussonによるBaxter置換の特徴づけを本質的集合の双対を導入することで拡張する。
その副産物として、Baxter置換全体がクラスターのような組み合わせ構造を持つことを見てもらいたい。
最後に、いくつか未解決問題とその解決への方針を提案する。
いろいろな意見を聞かせてもらえるとありがたい。
(講演用の資料です。)[pdf]
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第16回
日時:2013年9月21日(土曜)13:30~17:00
講演者:仲田 研登(岡山大学大学院 教育学研究科)
題目:一般化ヤング図形の組合せ論
要旨:ヤング図形の標準盤に関するフック公式は,
そもそもは対称群の既約表現の次元を組合せ論的に与える公式であるが,その証明法は様々で,
必ずしも表現論的な意味付けを持たない(まだ表現論的な解釈が与えられていない)組合せ論的な証明も多々ある.
一方, D. Peterson はヤング図形の一般化にあたる概念を導入し,
そのフック公式を与えたがその証明は公開していない.
本講演では, 1) ヤング図形のフック公式のいくつかの証明法,
2) D. Peterson による一般化ヤング図形, 3) 一般化ヤング図形のフック公式のいくつかの証明法,
について時間の許す限り解説する.
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第15回
日時:2013年8月24日(土曜)13:30~17:00
講演者: 山下 登茂紀(近畿大学 理工学部)
題目:グラフの不変量と閉路の存在について
要旨:ハミルトン閉路が存在するため十分条件として,
Ore条件と呼ばれる次数和条件とChvatal-Erdos条件と呼ばれる連結度と独立数の関係式が有名である.
これら2つの条件に対して,「Ore条件を満たすグラフはChvatal-Erdos条件を満たす」ことが示されている.
つまり,Ore条件はChvatal-Erdos条件より真に強い条件となっている.
このことより,Ore条件より弱い次数和条件を得ようとする研究が多くなされている.
本講演では,私が提案した「Chvatal-Erdos条件を満たさないグラフに対する次数和条件」について紹介する.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第14回
日時:2013年7月20日(土曜)13:30~17:00
講演者:塚本 靖之(京都大学大学院 人間・環境学研究科)
題目:二分的部分基とドメイン表現
要旨:本講演内容は立木秀樹氏との共同研究によるものである。
Xを第二可算公理を満たすハウスドルフ空間とする。
Xの2点をそれぞれの近傍で分離する際、2個の開集合で互いの外部となっているようなものを選ぶことができる。
ωを第1順序数とし、次のように定義する:
Xの二分的部分基S={S(n,i)|n<ω,i<2}(講演ではn,iは下付になる予定)とは、
互いに外部となっている2個の開集合S(n,0), S(n,1)の、可算個の組からなる部分基(準開基)とする。
なおラベル付けω×2→Sを固定したものを考える。Xの二分的部分基が与えられたとき、
それに対応するドメイン表現が得られることが知られている。
講演では主にXが正則な場合についてこのドメイン表現の性質を紹介し、
ハウスドルフであっても非正則な場合にかなりの不具合が起こることを例を挙げて示していく。
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第13回
日時:2013年6月15日(土曜)13:30~17:00
講演者:阿部 拓郎(京都大学大学院 工学研究科)
題目: 超平面配置の代数と組み合わせ論
要旨: 超平面配置とは、ベクトル空間内の超平面の有限集合という極めてシンプルな幾何学的対象であるが、
代数、幾何、組み合わせ論の様々な分野が融合する、興味深い研究対象である。本講演ではまず、
超平面配置の代数と組み合わせ論に関する基本的な事項を説明した上で、
以下の二つのトピックについて、時間の許す限り説明したい。
(1) 直線配置の交点数について。
平面中の直線の有限族は、もっとも単純な超平面配置の例である。ここで、原点を通るn本の直線からなる配置に、
新しく一本直線を加えたとき、この直線上に交点がいくつ出てくるかを考える。
すると交点数は1, n-1,nのどれかしかないことが簡単にわかり、2からn-2までの整数は交点として現れ得ない。
さて、これは偶然であろうか?即ちこれは、原点を通る直線配置にのみ成立することであろうか?
実はこれは、任意の体上の全ての直線配置に対して、ある組み合わせ論的不変量の正値性の観点から一般化できる事実である。
これは極めてシンプルな主張であるが、証明には超平面配置の代数幾何学的な分析を用いる。
(2) ルート系のexponentの高さを用いた一般化。
crystallographicなルート系には、exponentsと呼ばれる不変量が、様々な形で定義される。
これを一般化する試みは色々となされているが、今回はルート系のposetの部分集合で、イデアルと呼ばれるものに対して、
そのexponentsを超平面配置の幾何学及び、正ルートの組み合わせ論の観点から一般化する。
これはA. Shapiro及びSteinbergにより最初に発見され、後にKostant及びMacdonaldによって
分類なしの証明が与えられた、exponentsとルートの高さの双対関係の一般化にもなっている。
この結果は、M. Barakat, M. Cuntz, T. Hoge及び寺尾宏明との共同研究である。
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第12回
日時:2013年5月17日(金曜)13:30~17:00
講演者:野崎 寛(愛知教育大学 数学教育講座)
題目:グラフ構造から得られるs-距離集合について
要旨:ユークリッド空間上の有限集合Xに対して,Xの異なる2元のユークリッド距離からなる集合の元の個数がsであるとき,
Xはs-距離集合と呼ばれる。s-距離集合から,s個の関係を持つグラフ構造を自然に得ることが出来る。
逆にs個の関係を持つグラフをs-距離集合として,出来るだけ小さな次元の空間へ埋め込むにはどうすれば良いだろうか。
s=2については,Einhorn-Schoenberg(1966)により,その次元が簡明な格好で与えられているが,
sが3以上については未解決である。この問題の周辺の結果を証明と共に与え,
大きなs-距離集合に付随するグラフ構造の特徴づけを行う。また,ある性質を持つグラフ構造からは,
極小な次元へのs-距離集合としての埋め込みが容易に構成できることを紹介する。
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第11回
日時:2013年4月19日(金曜)13:30~17:00
講演者:嶺山 良介(大阪大学大学院 理学研究科)
題目:無限Coxeter群のroot系の極限集合について
要旨:Coxeter群はEuclid空間上のある種の鏡映変換として幾何学的に実現される群である.
この群を調べるにはルートと呼ばれる,鏡映変換を定める軸となるベクトルの軌道が重要な役割を果たす.
特に有限群である場合,Coxeter群はルート系の振る舞いで完全に分類される.
ところが無限群の場合はその解析が容易ではないことが知られている.今回の講演では,
無限Coxeter群を統一的に扱う試みとして,ルートを正規化した集合の集積点集合(極限集合)を調べる方法について述べる.
本研究は大阪大学の東谷章弘氏,北海道大学の中島規博氏との共同研究である.
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第10回
日時:2013年3月15日(金曜)13:30~17:00
講演者:福川 由貴子(大阪市立大学大学院 理学研究科)
題目: カタラン数の拡張と一般化について
要旨: カタラン数
は多くの解釈が知られており、その数は現在、200を超える.
例えば、(n+2)角形を交わらない対角線によって三角形に分ける方法や、(n+1)枚の葉をもつ二分木の総数、
ヤング図形(n,n)上の標準盤の個数、(0,0)から(n,n)へのDyck path総数などがカタラン数Cnで与えられる.
本講演の前半ではこれらをはじめとするカタラン数のいくつかの解釈を紹介し、
それぞれの解釈の間の関係について紹介する.さらに、それらの解釈の拡張を考える.
後半では特にDyck pathの個数としてのカタラン数に着目し、その解釈の下でのカタラン数の一般化について述べる.
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第9回
日時:2013年2月16日(土曜)13:30~17:00
講演者:田坂 浩二(九州大学大学院 数理学府)
題目: 多重ゼータ値の線形関係式と代数構造
要旨:
リーマンゼータ関数の多変数化である多重ゼータ関数の正の整数点での値を多重ゼータ値という.
多重ゼータ値の間には多くの線形関係式があり, 様々な分野の数学との関わりが知られる.
この実数値が張る有理数係数のベクトル空間には特殊な代数構造が入っており,
多重ゼータ値の関係式はこの代数(2変数非可換多項式環のある部分環)上の等式として表され,
代数的(組合せ的)な議論でこれを得る事ができる. 今回の講演では,
多重ゼータ値の代数的, 組合せ的な側面の話を中心に基本事項から復習し, いくつかの関係式の証明の手法を紹介する.
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第8回
日時:2013年1月19日(土曜)13:30~17:00
講演者:小関 健太(国立情報学研究所・JST, ERATO, 河原林巨大グラフプロジェクト)
題目:閉曲面上のグラフのハミルトン性
要旨:
グラフの全ての頂点を通る閉路をハミルトン閉路という.
古くは 4色定理(4色問題) との関わりもあり,「閉曲面上に辺の交差なく埋め込まれたグラフ」
のハミルトン性という話題は,
グラフ理論において一つの大きな研究対象となっている.
特に, Nash-Williams と Grunbaum による 「トーラスに埋め込まれた任意の4-連結グラフがハミルトン閉路を持つ」
という予想は現在でも未解決な重要なものである.
本講演ではこの予想へのアプローチの方法を含め,上記の話題に対しての最近の研究を紹介する.
(講演のスライドです。)[pdf]
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第7回
日時:2012年12月15日(土曜)13:30~17:00
講演者:冨江 雅也(盛岡大学 文学部)
題目:Permutation Patternの半順序集合論的側面について
要旨:
与えられたパターンを排除する置換の集合、
Pattern avoiding Permutations の数え上げに関する古典的な結果および、
Catalan Path、Schröoder Pathなど、よく知られたLattice Pathとのつながりについて概観する。
またいくつかの半順序集合たち、非交差な集合分割において分割の粗さで順序を入れた
Noncrossing Partition、置換の転倒数を表すLehmer Codeと関連した半順序集合、
またA型ルート系から定まるroot poset等との関わりについて述べたいと思う。
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第6回
日時:2012年11月30日(金曜)13:30~17:00
講演者:村井 聡(山口大学 理工学研究科)
題目:一般化された下限定理について
要旨:
1971年に McMullen と Walkup は d 次元単体的凸多面体のh-列に関し次が成り立つことを予想した。
(1) h-列は unimodal となる。つまり、h_0 \leq h_1 \leq \cdots \leq h_{[d/2]}が成り立つ。
(2) ある r \leq d/2 に対し h_{r-1}=h_r が成り立つならば、その凸多面体は d-r 次元以下の面を導入することなく三角形分割することができる。
この予想は、一般化された下限定理と呼ばれ、(1)については1980年に、(2)については2012年に予想が正しい事が証明された。この講演では、上の予想の(2)について解説する。また、時間があれば、この結果の球面や多様体の三角形分割への一般化についても話をする。
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第5回
日時:2012年10月27日(土曜)13:30~17:00
講演者:栗原 大武(京都大学 数理解析研究所)
題目:アソシエーションスキームとその周辺
要旨:
アソシエーションスキームとは,有限集合XとX×Xの”きれいな”分割の組のことを指す.
つまりX×Xの”きれいな”分割がXの元の間に”きれいな”関係を与えている.
これは有限群の一般化や,可移置換群の一般化として看做したり,ユークリッド空間内の``きれ
いな''点配置の構造を記述するものとして捉えることも出来る.
本講演では,アソシエーションスキームの初歩的な解説を行うとともに,デザイン,距離正則グ
ラフ,ユークリッド空間上の点配置などのアソシエーションスキームと関係する事柄についても
述べたいと思う.
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第4回 (この回の講演者は2人です)
日時:2012年9月14日(金曜)13:30~15:00
講演者:堀口 達也(大阪市立大学大学院 理学研究科)
題目:ヤングタブローとシュアー多項式
要旨:
シュアー多項式はヤングタブローを用いて表すことができる。その表示を用い
ると、シュアー多項式に関する様々な性質がわかる。そしてその性質は、一般線形群の表現やグ
ラスマン多様体上のシューベルトカルキュラスなどに応用されることが知られている。
この講演では、シュアー多項式のヤングタブローを用いた表示を解説し、それから得られるシュ
アー多項式の性質について詳しくみていこうと思う。
講演者:畑中 美帆(大阪市立大学大学院 理学研究科)15:30~17:00
題目:トーリック多様体のcancellation
要旨:
トーリック多様体とは、複素n次元の正規代数多様体で、稠密な開部分集合と
してトーラス(C*)nを持ち、さらにトーラスへのトーラス作用が自然に代数多様体に拡張してい
るもののことである。
本講演では、トーリック多様体の直積分解の一意性と、cancellation 問題について紹介する。
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第3回
日時:2012年8月25日(土曜)13:30~17:00
講演者:大杉 英史(立教大学 理学部)
題目:グレブナー基底とトーリックイデアル
要旨:
グレブナー基底とは、多項式環のイデアルの「よい」生成系であり、
連立方程式の変数消去など、様々な応用が知られている。
この講演では、グレブナー基底の初歩について解説するとともに、
トーリックイデアルのグレブナー基底について、凸多面体の三角形分割、
整数計画問題、統計学(分割表の検定)などへの応用を紹介する。
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第2回
日時:2012年6月15日(金曜)13:30~17:00
講演者:八森 正泰(筑波大学 システム情報系)
題目:任意の制限がシェラブルな単体的複体とオブストラクション
要旨:
単体的複体がshellableであるとは,極大な単体を順番に張り合わせて単体的複体
を構成する際に,新しく張り合わせる単体の1つ下の次元の面の集合を張り合わせ
部分とする形で構成することができることを保証するという性質である.Shellable
という性質はsequentially Cohen-Macaulayという性質を導くが,一般には2次元以
上でこの2つの性質は異なることが知られている.しかし,任意の頂点集合への制限
が必ずshellable,任意の頂点集合への制限が必ずCohen-Macaulay,という性質を考
えると少し状況が変わり,2次元以下でこの2つの性質は一致する.この結果は,Wachs
によって議論されていたobstruction to shellability (それ自身はnonshellableで
あるが,頂点集合の真部分集合への制限はshellableであるような複体)を分類する
ことで得られた.本講演ではこの結果について紹介する.また,3次元以上について
この2つの性質が一致するかどうかは未解決であるが,これについての現状も紹介し
たい.(本講演は,柏原賢二氏との共同研究に基づく.)
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第1回
日時:2012年5月11日(金曜)13:30~17:00
講演者:東谷 章弘 (大阪大学大学院 情報科学研究科)
題目:一般化された格子多角形の組合せ論
要旨:
格子多角形に関するよく知られた古典的な結果として、「ピックの公式」が挙げられる。
ピックの公式は、面積を格子点の個数の情報だけで記述する公式であると共に、
ピックの公式から、格子多角形をm倍に膨らませたものに含まれる
格子点の個数を表す二次多項式、つまり Ehrhart 多項式を導くことが出来る。
このような議論は、格子多角形を一般化した対象に対しても成り立つことが知られている。
また、トーリック幾何においてよく知られている「12点定理」についても、
一般化された格子多角形で同様の公式が成立することが知られている。
本講演では、この「一般化された格子多角形」を明確に定義し、
一般化されたピックの公式、Ehrhart 多項式および12点定理について紹介する。
また、様々なクラスの一般化された格子多角形に対して、Ehrhart 多項式を議論する。
(本講演は、枡田幹也氏との共同研究に基づく。)
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